生前贈与を受け、相続時精算課税制度を利用する方へ

生前贈与を受け、相続時精算課税制度を利用する方へ

 相続時精算課税を利用する方は、管轄の税務署に対し、申告書を提出する必要がありますが、申告期間は、贈与の行われた年の翌年の2月1日から3月15日までです。一日でも過ぎると、相続時精算課税制度を利用できなくなるので、制度を利用される方は、必ず3月15日までに手続きを行って下さい。
 本年も、相続時精算課税制度の申告期間に突入しておりますので、該当する方、これから利用しようかと検討されている方に向けて、解説致します。

相続時精算課税制度とは?

相続時精算課税制度の概要

相続時精算課税制度とは、60歳以上の親から20歳以上の推定相続人または孫への贈与について、財産額が2,500万円までは、一定の条件の下、贈与税が掛からなくなるというものです。
 将来相続が発生した時に、相続時精算課税制度により贈与をした財産額を、相続財産に加算し、相続税基礎控除額を超えた場合は相続税が課税されます。贈与税を支払っている場合には、その贈与税額を相続税額から差し引くこととなります。
 節税の為に利用を検討する方が多いですが、必ずしも節税になるものではありません。


相続時精算課税制度を利用する際の注意点

 相続時精算課税を利用する方は、税務署に対し、戸籍等の必要書類と併せて申告書を提出する必要がありますが、申告期限は、贈与の行われた年の翌年の2月1日から3月15日までです。この期間を一日でも過ぎてしまうと、相続時精算課税制度を利用することが出来なくなりますので、期限については要注意です。
  一旦、相続時精算課税を選択した場合は、暦年課税(原則通り、贈与税を納付する方法)に戻る事は出来ないので、贈与者の財産額等の状況を踏まえた上で、制度を利用すべきか否かを決定すべきです。
 また、直系尊属(親、祖父母)からの贈与の場合に利用できる制度ですので、例えば、妻の親から夫への贈与については、対象となりません。

相続時精算課税制度のデメリット

 上記に記載の通り、親から子や孫への贈与に関し、相続時精算課税制度を利用する場合、財産額2500万円までは贈与税が掛かりませんが、超える場合は、越えた分に対して一律20%の贈与税が課税されます。
 不動産、預貯金等の高額の財産を所有している方が、特定の不動産のみを生前贈与する場合、2500万円以下であれば、贈与税を回避できたとしても、将来の相続発生時に、多額の相続税を納付する必要があり、贈与時に贈与税を納付する方が、トータルの納税額が低くなる場合もあります。
 また、不動産の生前贈与を受け、相続時精算課税制度を利用した場合、贈与税の納付を回避できても、登記費用、不動産取得税は掛かります。相続の場合と比べて、登記費用は贈与の方が高く、不動産取得税については相続だと掛かりません。

不動産の生前贈与を受けた方は、相続時精算課税制度の利用を検討して下さい!

不動産の生前贈与を受けた場合の費用

不動産の生前贈与を受けた場合、登記費用、不動産取得税、贈与税が掛かります。このうち、本日のテーマの相続時精算課税制度を利用する事で、贈与税を回避することが出来ます。一般的に、贈与税は税率が高いので、登記費用と不動産取得税よりも金額が大きい場合が多く、贈与税を回避できるメリットは大きいです。


相続時に、揉める可能性がある場合は、生前贈与をご検討下さい!

 生前贈与でも、相続による場合でも、財産を受けるという点では同じですが、上記に記載の通り、税金の額については、生前贈与の方が高いです。ただ、相続の場合、原則として、相続人全員の関与が必要となり、不動産の相続登記や銀行口座凍結解除手続きの際には、相続人全員の署名捺印、印鑑証明書の提出が必要となります。
 その為、相続が発生した後に、話し合いがまとまらなかったり、連絡を取れない方がいる場合は、生前贈与をする費用が高いとしても、生前贈与をした方が良い場合もあります。
※生前に、遺言を残すことで、トラブル回避をする方法もありますが、今回は割愛致します。

生前贈与をすべきでない方とは?

 ご相談を頂く方の中で、元気なうちに実家等不動産の名義を子や孫に変更をしたいという方がおりますが、上記に記載の通り、登記費用、不動産取得税、贈与税が掛かります。
 相続時精算課税制度を利用し、贈与税を回避することが出来ても、登記費用、不動産取得税は掛かります。相続発生時に揉めることもなく、円満に話し合いができる場合は、相続発生を待って、贈与では無く、相続の手続きにて財産を取得した方が、コストは安いです。相続時精算課税制度を利用すべきか否かを検討する手間もありません。
 生前に名義変更しておくことで、スッキリするというのはメリットかもしれませんが、税金等のコストを知った上で判断すべきです。
相続を待つか、遺言を残すことで、同様の効果を得られるケースも多いです。

生前贈与をする際に、司法書士が出来ること

親、祖父母から相続を待たずに生前贈与により、不動産の名義を受ける場合

 実家等の不動産を贈与する場合、贈与を原因とする名義変更(所有権移転登記)をする必要があります。司法書士は、登記手続きの専門家ですので、ご検討されている方は、ご相談願います。
 生前贈与は、税金等のコストの兼ね合いがあるので、相続時精算課税制度を利用できる場合でも、生前贈与をせずに相続を待った方が良い場合もあります。
 資産の内容によっては、税金の計算が複雑になる場合もあります。司法書士として一般的な回答は出来ますが、込み入った内容になる場合は税理士とお繋ぎしたり、場合によっては税理士に同席して頂き、方向性を決める場合もあります。
 生前に不動産名義を贈与したいというご相談に対して、コストやメリット・デメリットをしっかりとご説明した上で、ベストな解決策をご提案することを約束します。


贈与を原因とする不動産の名義変更をする際の手続きの概要

 贈与を原因とする不動産の名義変更(所有権移転登記)をする場合、具体的な手続きとしては、不動産の登記識別情報通知(権利証)等の必要書類をご用意の上、管轄の法務局に対して、登記申請します。
必要書類としては、
贈与者(贈与する方)については、登記識別情報通知(権利証)・印鑑証明書、
受贈者(贈与を受ける方)については、住民票をご用意頂きます。
ケースによっては、贈与者の住民票等のその他の書類が必要な場合もあります。
 また、司法書士に依頼をする場合は、委任状にご記入頂くのと併せて、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード)の写しをご用意頂きます。

まとめ

 相続時精算課税制度の申告期間は、贈与した年の翌年の2月1日から3月15日までです。この期間を1日でも過ぎた場合は、相続時精算課税制度を利用することが出来なくなります。本年も、既に申告期間に突入しておりますので、相続時精算課税制度を利用する方は、必ず3月15日までに手続きを行うようにして下さい。
 2024年4月からの相続登記義務化に伴い、相続登記に関するご相談が増えておりますが、併せて生前贈与に関するお問い合わせも増えております。
 コストだけでなく、メリット・デメリットを踏まえた上で、生前贈与を行うべきか、生前贈与をするにしても相続時精算課税制度を利用すべきかを決定して下さい。
 はぎわら司法書士法人では、相続、遺言、生前贈与に関する手続きをこれまで多数お手伝いさせて頂きました。
 ご相談をお待ちしております。

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このコラムを書いた人

はぎわら司法書士法人代表司法書士 萩原 耕平

資格

  • 札幌司法書士会 札幌支部所属
  • 札幌司法書士会 札幌支部 登録番号:745号
  • 簡易訴訟代理関係業務認定:第943024号

メッセージ

札幌市内の司法書士事務所に勤務後、平成26年2月、「萩原司法書士事務所」を開設、令和3年6月、「はぎわら司法書士法人」を設立。「人」が見える形での対応を心掛けております。
一期一会をとても大切にしており、デメリットも含めしっかり説明した上で、最適な選択肢を提案する事を約束致します。
フットワークが軽いことが自分の強みであると自負しており、気軽にご相談頂きたいですし、新しいことへの取り組みを厭わず、様々なことに挑戦していきたいです。
悩みを抱えているものの、どこに相談したら良いかわからない方からのご相談をお待ちしております。
学生時代、約10年間、バスケットボールをしており、仲間の大切さ、目標を高く持つこと等の沢山の事を学びました。現在は、バスケットボールに対する恩返しをしたい思いもあり、地元のバスケットボールチーム「レバンガ北海道」のオフィシャルスポンサーをしております。

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